私たちヘンプイノベーションは、三重県明和町を舞台に麻文化の再生を目指す
産学官連携プロジェクト「天津菅麻(あまつすがそ)プロジェクト」の一員です。
このプロジェクトには、麻績の技法を丁寧に継承し、地域が誇る麻文化を
次世代へ繋ごうとするメンバーから、産業化・GX推進を担う企業まで、
様々な立場のメンバーが集っています。
その揺るぎない「根」があるからこそ、私たちは大きく「枝を広げる」ことができます。
今日はそんなプロジェクトの中で、ヘンプイノベーションが挑む
「もう一つの物語」をお届けします。
大麻草の播種は、桜の開花を合図に始まります。
そんなわけで私も桜と共にこの原稿を書き始めました。
わずか90日で3メートルに達する、あの猛烈な生命力が、
これからまさに始まろうとしている。
そんな季節に私たちの「挑戦」を綴れることが、なんだかとっても嬉しいのです。
舞台は、三重県明和町。ここはかつて「麻績郷(おみごう)」と呼ばれ、
伊勢神宮へ献上される大麻布(荒妙)の聖なるサプライチェーンを担った土地です。
私たちがやろうとしているのは、失われつつある技と文化を、
現代の技術でもう一度つなぎ直して、世界に「どうだ、これが日本だ!」と
持っていく。そんな夢と気合のこもったプロジェクトです。
では、その「世界に持っていく布(大麻布)」はどうやって生まれるのか。
大麻布ができるまでには、段階があります。
繊維用の大麻草を育て、茎から繊維を抽出し、
それを一本ずつ繋いで糸にする(麻績)
——この前半のプロセスは、技術として命脈を保ちながらも、
産業としては途絶えたままです。
神社祭祀においては麻の伝統は今も息づいています。
しかし、布になるための糸を作る技術と生産基盤は、
現代の日本でほぼ成立していない。
だからまず、ここを取り戻すことが私たちの出発点です。
2025年7月、ヘンプイノベーションは栃木の大麻博物館から、
25年以上にわたり大麻とその繊維を研究し続けてきた高安淳一館長を
スペシャリストとして招聘しました。
高安館長と共にこの土地をひもとく中で、この土地の秘密が少しずつ見えてきています。
例えば、「斎宮の水」です。高安館長による調査で、
明和町の井戸水はpH5.9の弱酸性であることが判明しました。
この水で麻を処理すると、繊維が艶やかに締まり、独特の光沢が生まれる。
麻績郷が美しかったのは、この水のせいだったのか。
そんな発見に、ちょっと胸が震えました。
今年、私たちが挑むのは、この「土地の恵み」と「先人の知恵」、
そして「現代のシステム」の統合です。
職人の身体感覚まさに熟練の技に頼り切っていた「麻績(おおみ)」の技法を、 私たちは機械化(半工業化)することを目指しています。 それは、伝統を効率化して壊すことではありません。 その文化を継承して、産業として自立できる「共通言語(OS)」に書き換える作業です。 つまり、名人の技術や経験を、誰でも使える仕組みとして社会実装する、ということです。 ・1ヘクタールで9〜15トンのCO2を固定する環境性能(EU公式ページ)。 ・伊勢神宮への荒妙奉納に繋がる、他国には決して真似できない1300年の物語。 ・そして、繊維の方向を揃えて績むことで引き出される、麻繊維本来の機能性。 世界にも素晴らしいヘンプ製品はある。 でも、麻が生えていた向きのまま一本ずつ繋いだ糸から生まれる布は、まだ世界にない。
この三つが揃ったとき、日本の麻績糸はきっと世界に通じる。
根拠のない自信じゃないと思っています。
栽培、繊維抽出、糸績み、織り、ブランド化——この道のりははっきり言って長いです。
一年や二年で世界に届くものではないと、自覚しています。
でも、どこかで種を蒔かなければ、布は生まれない。
その最初の一粒が、4月18日です。
来たる4月18日(土)。午前10時より……

来たる4月18日(土)。
午前10時より、天津菅麻プロジェクトとして今年で4回目となる「種蒔神事」を斎宮の史跡にて執り行います。
神事の後には、高安館長の指導のもと、今年初めての試みとなる「麻種蒔き(おたねまき)」を行います。
これは単なる農作業の開始ではありません。
2025年3月1日、旧・大麻取締法が「大麻草の栽培の規制に関する法律」として全面施行され、大麻草の産業・医療利用に向けた新たな制度の枠組みが整いました。
その夜明けを経て、日本が再び「麻の国」として歩み始めるための、聖なる号砲です。
どなたでも自由に見学いただけます。
一筋ずつ蒔かれる種が、やがて黄金の繊維となり、
世界を包む布へと育っていく物語の「第一ページ」を、ぜひ目撃しに来てください。
この神事と麻種蒔きの様子については、4月19日のアドベントカレンダーにてご報告させていただきます。
筆が少々熱くなりすぎた感もありますが、現場の空気が少しでも伝われば嬉しいです。
2026年、春。麻績郷の再誕は、ここから始まります。

さらに今年は、高安館長のプロデュースによる特別展も開催中です。
実際に麻に触れるワークショップも用意されており、日本古来の農作物を復興させる取り組みを肌で感じていただける貴重な機会です。
ワークショップ: 期間中の毎週金曜日(参加費500円)に、麻に触れる体験が可能です。
参考:令和7年 種蒔き神事と種蒔きの様子